事業内容について
コロナ後初となる大型オフラインイベント
(MUIP 戦略投資部 Director 廣田隆介、Associate 深田由香)
—はじめにMUIPがどのような活動を展開しているのか教えてください。
廣田:MUIPはMUFGのオープンイノベーション戦略を担うCVCとして、2019年1月に設立されました。国内外のスタートアップとMUFG各社の協業推進と、スタートアップへの戦略出資の推進が目的です。現在、200億円規模の旗艦ファンド3本を中心に合計で約800億円の預かり資産残高があり、出資先は国内外45社に上ります。
—今回のイベント開催でめざしたものは何ですか。
廣田:三つありました。一つ目は「世界が進むチカラになる。」というMUFGのパーパスを実現するために求められている継続的なカルチャー改革の実行です。イベント冒頭、亀澤社長より、「国内だけでなく海外にも視野を広げて、スタートアップの皆さまから最先端のテクノロジーやビジネスモデルを学び、柔軟な発想で新たなチャレンジをするというカルチャーを実感することが非常に重要である」とメッセージをいただきましたが、MUIPとしてもMUFGのカルチャー改革に貢献する場を提供したいと考えていました。
二つ目は、出資先スタートアップとの対談を通じた、実際の協業事例の共有や海外でのトレンド、ビジネスモデルの学びの場の提供です。MUIPの出資先は海外が約7割を占めているのですが、コロナ禍もありMUFGの皆さんに海外スタートアップの情報を直接届けることができませんでした。コロナ明けの機会を捉えて、ファウンダー(創業者)を招聘し、彼ら自身から最先端のテクノロジーやビジネスモデルのトレンドを語ってもらいたいと考えました。実際に三つの各セッションにおいては、山本CDTOをはじめMUIPの出資先スタートアップ5社のファウンダーや経営者との対談を実施し、MUFGのデジタル戦略、実際に案件化した協業事例を体系的に学びつつ、海外の最先端テクノロジーやイノベーション事例に触れる内容や、継続的なイノベーション実現のために必要な組織文化や個々のマインドセットについても焦点を当てた内容となりました。
三つ目は、実際にファウンダーの方々が来日される機会をMUFGの皆さんに活かしてもらい、対面ならではの新たな協業のきっかけづくりにしてほしいと考えました。
深田:海外スタートアップの情報は毎週社内向けに発行しているニュースレターや各事業部との定例会議でも紹介していますが、それだけでは地理的な距離や文化の違いなどもあり、実際の協業にはなかなか結びつきません。ぜひオフラインで対面する機会をつくりたいと思っていました。
取り組みと成果
三つのセッションと懇親会で交流を実現
—イベントに向けてどのような準備をされたのですか?
廣田:招聘するスタートアップについては、出資先の45社から最新の海外発のテクノロジーやビジネスモデルを持っていることや、日本のマーケットへの応用の可能性、すでに一定の進捗がある協業の加速化など、さまざまな要素で絞り込み、最終的に5社を選定しました。MUIPとして、MUFGの方々にはまだ見えていないかもしれないけれど、私たちなりの仮説に基づいてぜひ推薦したい、という観点も含め選んでいます。
深田:招聘スタートアップの選定と同時に重要なポイントと考えていたのが、当日のプログラムです。こうしたイベントは通常、招聘したスタートアップが自社の技術やビジネスモデルをプレゼンテーションするという形を取ると思いますが、あえてそれはやめました。せっかくのオフラインイベントですから、スタートアップ経営者の生の声を引き出したいと思い、具体的には、各40分のセッションを3ターム用意してMUIPのメンバーがモデレーターとなって話を引き出すというスタイルにしました。
さらに、三つのセッションはそれぞれテーマを変えて、参加者の幅広い興味関心に沿えるように工夫しています。一つ目は、すでに協業が進行中のものを取り上げ、浮かび上がった課題をどう乗り越えたのかということを中心に話し合ってもらいました。二つ目は、私たちが今後協業の可能性が大きいと考えているテクノロジーやビジネスモデルの内容にフォーカスしてその内容を紹介するもの、三つ目は、米国で最新トレンドになっている中堅企業向けの法人支出管理SaaSについて話を聞きながら、それが日本でどのように活用できるのかを参加者の皆さんに考えてもらうものにしました。
—参加者数も多かったようですね。
深田:金曜日の夕方から4時間続くイベントであったにもかかわらず、MUFGから約130名の参加があり、引き続いて懇親会にも100名ほどが参加と、予想を上回る盛況となりました。
MUFGのイノベーション人材をつなぐ場としても
—参加者はどんな感想を持ったのでしょうか?
廣田:まず、本イベントのために来日したファウンダーからの評価は非常に高かったですね。「MUFGが一丸となって協業をサポートしてくれるということを、改めて実感して感動した」というコメントをもらいました。これまでもMUIPとしてどのように協業のサポートができるか、またMUFG全体としてこれだけのケイパビリティを持っているという話はしてきましたが、実際に出資フロントである私たちの後ろにこれだけの事業部が控えていて、たくさんの協業可能性があるということをリアルにお伝えすることができたと思います。
深田:会場の皆さんの評判も上々でした。同時通訳も入れたのでセッションの内容も細部まで理解してもらえたと思います。懇親会は完全に自由なネットワーキングの場としていたので会話が盛り上がるかどうか心配もしていたのですが、ファウンダーを囲んだ人の輪があちこちにできていました。「やはり対面はいいですね」という声もたくさんいただきました。
廣田:確かにオフラインならではの、壁が取り払われる速さを改めて感じました。部署間の連携は日常業務において意識しないと難しい点もあり、オンラインのみですとさらに横のつながりをつくることが難しいかと思いますが、これをきっかけに相互のコミュニケーションが深まってMUFG内での部署を超えた協働機運もさらに育っていけばと思っています。今回のイベントにはMUFGのオープンイノベーションに実際に携わっている人がメインで参加してくれたこともあり、より有機的なつながりがつくれたのではないでしょうか。実際、スタートアップと接していると、イノベーションは立場が違う人との会話やアイデアのぶつかり合いから生まれてくるものだと感じますし、さまざまなバックグラウンドを持った人がMUFGという大きな組織の中にいるので、その知恵や体験を部署内にとどめるのではなくクロスさせていく上でも、このイベントは価値があったのではないかと思っています。
今後の展望
オフラインのイベントを継続。国内スタートアップも招聘したい
—これからの展望を聞かせてください。
廣田:このイベントはMUFGの継続的なカルチャー改革の一助になったと思いますし、海外のイノベーションのトレンドやMUIPの自信のある出資先についてお伝えすることができました。今回の来日をきっかけに生まれた協業の話もあるので、それを育てていきたいと思っています。また、こうしたオフラインのイベントは今後も継続して開催していく予定ですが、MUIPとしては国内も重視したいと思っています。MUFGの第一のマザーマーケットである日本でいかにイノベーションを推進していくかは、MUIPの重要なアジェンダで、直近では日本の出資先も増えてきています。国内のスタートアップにとってMUFGと協業することで、国内だけではなく東南アジアや米国など、MUFGの海外のネットワークや事業アセットを組み合わせてグローバルに事業を展開し得る可能性を秘めています。ぜひ今後は、日本のスタートアップも巻き込んで日本ならではのテクノロジーの紹介や事業部との協業の推進をしていきたいと考えています。
深田:MUIPは設立から4年半を経過したところですが、まだ一般的な認知度が高いとはいえません。MUFGにCVCがあり、国内外に積極的に出資をしているというお話をすると驚かれる方も多いです。今後も私たちがオープンイノベーションの先頭で情報発信したり、スタートアップとの協業を積極的に支援していくことで、グローバルに事業展開するMUFGの認知度向上や高い評価につながっていくことになればと思っています。
Profile
※所属・肩書は取材当時のものです。
三菱UFJイノベーション・パートナーズ 戦略投資部 Director
廣田 隆介
直近の約8年間は在シンガポールの日系VCにて、アーリー・ステージのテック系スタートアップ投資、成長支援に従事。2023年1月より現職。主に東南アジア市場を担当しており、特にダナモン銀行のオープンイノベーション支援を目的としたMUIPガルーダファンド一号の運用を担当。
三菱UFJイノベーション・パートナーズ 戦略投資部 Associate
深田 由香
東レにて貿易実務や駐在員サポートなどの海外業務に従事後、2022年1月より現職。戦略投資部にて広報やイベント運営などを通じたPR、およびChief Investment OfficerのExecutive Assistantを担う。